東京学芸大学パッケージ型支援プロジェクト東京学芸大学パッケージ型支援プロジェクト

センター長のご挨拶

センター長のご挨拶

           東京学芸大学 児童・生徒支援連携センター

     センター長 加瀬 進(東京学芸大学教授)

 

2008年11月に阿部彩氏の著書『子どもの貧困-日本の不公平を考える』(岩波新書)が公刊されてから10年余。この間、貧困研究が大きな注目を集め、貧困や格差の連鎖を断ち切るべく、さまざまな研究や社会運動、また、それらをベースとする公的な貧困対策も進められてきました。東京学芸大学パッケージ型支援プロジェクトもこうした状況を背景として2015年に始動し、児童・生徒支援連携センター(CCSS)はその実践研究を推進するプラットフォームとして機能すべく設置されました。
 さて、有意な教育者(教師や教育支援職)を養成する本学の「子どもの貧困」に対する取り組みにはいくつかの特色があり、それはまたCCSSの軸足にもなっています。
 第一に私たちは経済的困窮そのものではなく、経済的困窮を背景にして子どもに現れる様々な「困難」、即ち支援ニーズに着目し、その軽減・解消に取り組むことで子どもの育ちと学びを豊かにしようとしています。この支援ニーズには、例えば「孤立・排除」「低い自己肯定感」「さまざまな体験の不足」「低学力」「健康・発達への影響」「ネグレクト」「文化的資本の不足」「不十分な衣食住」等々を見て取ることができます。言い換えれば「その社会で、通常得られる又は経験できる“モノ”を得られない・経験できない」ことから生じる学習・教育機会やライフチャンスの制約」ということができるでしょう。
 第二に「子どもを“護る”」という視点を大切にしています。その際、「まもる」には「守る」ではなく、「護る」という漢字を用いたいと思います。

<守る>
語義:手の中に包み込んで、放さない。
解釈:多様な支援者が、それぞれの都合や「専門性」なるものによって「子どもを手の中に包み込んで
放さない」という事態は決して子どもの最善の利益を「まもる」ことにはならない

<護る>
語義:そこにある何ものかが壊れないように、外から支える。
解釈:子ども自身が壊れずに、成長していけるように、多様な支援者が手を携えて外から支える~例えて言えば、人の手によるトランポリン のように~ことこそが子どもの最善の利益を「まもる」ことになる。

1994年に日本が批准した「子どもの権利条約」、その意訳コンテストで最優秀賞を獲得し、翌1995年に出版された小口尚子・福岡鮎美『子どもによる、子どものための、子どもの権利条約』(小学館)では、条約の第3条第2項がつぎのように訳されています。

 「お父さんやお母さんやそれに代わる人、そのほか子どもに“しなきゃいけないこと”がある人、そんな人たちみーーーーーんなが力を合わせて、ぼくら子どもが幸せになるように、護ったり、育てたり、そのほかいろいろしてくれる。国はその人たちと協力して、ぼくらを護るためにできることは全部してほしい。」

 ちなみに当時、このお二人は中学生でした。まぶしいほどの感性ですよね。

 私たちCCSSのスタッフも、「パッケージ型支援プロジェクト」にかかわる「しなきゃいけないこと」がある人たち~大学、附属学校、公立学校、学生をはじめとするみんなが力をあわせ、「子どもを“護る”」ことができる実践と研究を進められるよう「一丸となって」取り組んでいく所存です。どうか、ご支援・ご指導賜りますよう、お願い申し上げます。

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